読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

aruku note

世界は、価値の鉱山だ。

シェアリングエコノミー、その本当のヤバさを理解していますか

シェアリングエコノミーが熱い。……ということはずいぶん前から言われており、もはや何となく常識となりつつあります。では、そもそもシェアリングエコノミーとは何でしょうか。

「なんかアレだよね、ネットが発達して人と人が繋がりやすくなったから、いろいろシェアしやすくなって便利で経済的だよね」

いざ説明しろと言われると、これくらいの漠然としたイメージという人が大半ではないでしょうか。これも間違ってはいないのですが、しかし、シェアリングエコノミーの可能性、その根底にある示唆の深さは、もっと深く、もっと広く、とてつもなく面白いのです。

3つの新潮流

一時期このテーマに関連する書籍を読みあさったのですが、その中でも頭ひとつ抜けたオススメはこの一冊(日本語訳は少々……ですが)。

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

  • 作者: レイチェル・ボッツマン,ルー・ロジャース,小林弘人,関美和
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2010/12/16
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 28人 クリック: 1,325回
  • この商品を含むブログ (99件) を見る
 

同書が指摘する、社会に生まれつつある大きな新潮流は以下の3つです。

1. プロダクト・サービス・システム(PSS)の隆盛

端的に言えば「所有から利用へ」。モノを「購入・所有」させずに、「利用」だけさせて対価を得るサービスをPSSと言います。古典的な例は図書館やコインランドリーですね。

最近の例では、タイムズのようなカーシェアリング。単に車を買うより安いというだけでなく、「今日はベンツ、明日はBMW」といったような楽しみ方も可能だし、自分が利用している時間以外の車の維持・管理は一切気にする必要がありません。

クルマに限らず、冷静に考えれば「利用」だけした方がはるかに合理的で、しかもインターネットの普及前からそのような取引が可能であったようなモノは、世の中にいくつも存在します。

にもかかわらず、なぜこのようなサービスが「今さら」注目を浴びているのか。考えるべきはむしろこのポイントでしょう。

答えは単純、今までが異常だったということです。大量消費社会で売上を伸ばそうとしのぎを削る企業たちが編み出した禁じ手、それは「購入・所有」への幻想を煽って煽って煽りまくること。この魔法が、今になってようやく解けつつあるのです。

人間の際限のない欲望を喚起するという目的のために、とことん科学的に研ぎ澄まされた広告理論。計画的に陳腐化し、新モデルへの需要を引き出すことが最初から組み込まれた商品設計。

企業が英知を結集して練り上げたこれらの「魔法」の前に、消費者個々人の脳ミソはあまりにも無力でした。

PSSの隆盛は、この魔法から目覚めた人たちが、世の中で徐々に増えていることを意味しています

「あなたの所有欲を刺激する……」みたいな広告のうたい文句、いまだに目にしますが、これほど時代遅れでセンスのないフレーズも無いということですね。だいたい対象はオッサン向けの商品。世の中で魔法が最後に解けるのはオッサンたちなのでしょう。

2. 中古市場の拡大(同書では「再分配市場」)

メルカリが好調ですが、他にも物々交換やフリーマーケットのようなサービスは海外でも近年勢いを増しています。PSSの主役の多くが企業(B2B/B2C)であるのに対し、こちらは個人どうし(C2C)のシェアが中心になります。

これについてはまさに冒頭に書いたように、インターネットの普及がモロに最大の立役者と言って問題ないでしょう。

実世界で中古のモノを買い取ってもらえる値段が低い最大の要因は、単純にマーケットの大きさの問題です。

古着屋なんかはまだ「古着」というマーケットが確立されているからマシですが、例えば「加湿器」を買おうと思った人は、ふつうリサイクルショップではなく家電屋に行きます。リサイクルショップに加湿器が置いてある可能性はあまり高くないからです。だからリサイクルショップの店主は不良在庫化のリスクを頭に入れ、加湿器を二束三文で買うしかありません。

これが全国津々浦々から出品されるメルカリのようなネット上のプラットフォームの場合、加湿器が欲しい人も「とりあえずメルカリ見てみようかな」と考える可能性は十分あるし、出品者側もそれなりに自信を持って正当な値付けができるわけです。

ネットだから高値で・早く売れるというよりも、実世界では物理的制約のせいでなかなか正常な機能を発揮しづらい中古市場という仕組みが、ネットのマッチング力によって本来の力を解き放たれつつある……と言ってよいでしょう。

3. 信用・価値の源泉の変化(同書では「コラボ的ライフスタイル」)

第3のポイントは、コミュニティこそが最強の価値の源泉となる時代になりつつあるということです。

ナイキというメガブランドでさえ、製品広告を打つことからコラボ的なコミュニティを築くことに、ブランドの軸足を移しつつある。
(『シェア <共有>からビジネスを生み出す新戦略』より)

消費者は徐々に「魔法」から解放され、広告を介さない消費者同士の中古商品のやり取りも勢いを増している。そんな中で、企業が発するどんな売り文句やクールな商品イメージも、口コミには敵わなくなっています。

だから今や、コミュニティを耕すことこそ最強のプロモーション。「ナイキの商品」ではなく、「ナイキファンというコミュニティ」に属すことに価値を感じてもらうべく最大の努力を尽くすのです。

これは商品の価値に限ったことではなく、例えば個人の信用についても同じこと。

お金の貸し借りというのは、元々はそもそもコミュニティ内での評判をもとに行われていました。借り手、貸し手、そして彼らの素行を知っている証人、この三者がいれば成り立ったのです。

それが取引の巨大化・遠隔化にともない、銀行という仕組みが生まれたことによって、一括管理しやすい「信用履歴」という単純なデータが重要視されるようになりました。これもまた、価値観としては大量生産・大量消費の「魔法の時代」に非常に近しいものがあります。

これにより一時は影を潜めたコミュニティ型取引のモデルでしたが、今また再び、マイクロファイナンスやファンドレイジングのような古くて新しい金融モデルが勢いを増しています。

単なる「カネを返したか・返してないか」ではなく、カネの出し手がカネの受け手それぞれの様々なバックグラウンドやビジョンを鑑みながら、投資・融資に値すると思ったらそれを実行することができる。自分の「バックグラウンドやビジョン」がきちんと信用に値するという証明は、SNSによって昔より遥かに示しやすくなりました(例えば実名でFacebookをやっていて、友達が数百人以上いて、投稿内容も不自然でなければ、まずその名前で詐欺めいたことをしているとは考えづらい)。

同時多発の化学反応

さて以上、シェアリングエコノミーの三本柱となっている変化、その潜在的インパクトの大きさについて解説してきました。

それを踏まえて結局何が言いたいかというと、シェアリングエコノミーというのは何かそういう新しいマーケットが生まれましたよ、みたいな個別レベルの話ではなく、そもそも経済の土台になっている価値観そのものの大転換である、ということです。

さまざまな変化が同時多発的に、お互い化学反応して強化し合いながら経済のあり方を塗り替えつつあるのです。使い古された言葉ですが、パラダイムシフトというやつですね。

ではこれを踏まえて、実際に私たちにはどんなチャンスが転がっているのか?という話は、また次の記事にまとめてみたいと思います。