aruku note

世界は、価値の鉱山だ。

武井壮という男の凄さについて、ロジカルに語ります。

突然ですが、私の尊敬する人は武井壮さんです。

この尊敬する人リストには日本なら孫正義さん、海外ならペップ・グアルディオラ監督、歴史を遡れば内村鑑三などそうそうたる顔ぶれが並んでいるわけですが、そんな強者たちを抑えて私にとって堂々の第一位が武井壮さんなのです。

それだけすごい人であるにもかかわらず、まだまだその真髄が広く世の中に理解されていないような気がするので、今日は彼の何がそこまですごいのかについて言語化してみたいと思います。

 

武井壮 Ver.2("Need"への気づき)

武井さんは、30歳ごろにある転機を迎え、その学びから一つの人生哲学を導き出しています。

価値とは、人が求める数である

「チャンピオンになれるスポーツ」を求めて陸上十種競技を始め、わずか2年半で本当に日本チャンピオンとなってしまった武井さん。

にもかかわらず、世間一般から見れば何の注目も集まらず、経済的にも大したインパクトは無く、「チャンピオンとなった結果がこれか」と愕然とします。その根本的な理由を考えた末に、たどり着いた結論が「価値とは、人が求める数である」というものです。

十種競技というものを、わざわざお金を払ってまで観たいと思っている人がどれだけいるか。自分がいくら競技のパフォーマンスを高め、ついには日本の頂点にまで立っても人生の豊かさに繋がっていないのは、十種競技によって人を喜ばせたり、感動させたり、価値を与えられる数があまりにも少ないからだ。

そう思い至った彼は一転、「多くの人を喜ばせられる職業」として、芸能界入りを目指しはじめたのです。そのときの努力もまた半端ではありません。

芸能人の集まる西麻布や六本木のバーで、服にICレコーダーを忍ばせつつ、ロックグラスで牛乳を飲みながら犬用の骨みたいなガムをかじる。

そのICレコーダーから、芸人さんが笑いをとった会話の場面を編集してCDにし、何百回も繰り返して完全コピーできるようになるまで暗唱する。

「変な奴だな」と芸能人に声を掛けられれば、待ってましたとばかり「百獣の王になりたくて顎を鍛えてるんです」と返答し、人脈を築きながらみごとTVデビューの糸口を掴んでいます(初期の百獣の王キャラは演じていたと本人も認めています)。

そして「芸能人・武井壮」として金メダルを取ったマスターズ陸上は、現役時代よりもはるかに大きなニュースとなり、人々に夢を与えられた。 

こうした学びから武井さんは、ある分野が社会的な価値を生むかどうかも分からない・判断できない子どもを、特定のスポーツエリート育成の道へ送り出すことにも警鐘を鳴らしています。

そうではなく、「無駄にならない努力」の積み上げ方、そしてそれによって着実に夢を叶える背中を見せて、「お前もこうやって夢を叶えられるんだぜ」と示すのが大人の役割だろう、と。


【武井壮の「大人の育て方」がマジ凄い!】オトナの学校 完全版

ビジネス的に言えば、要はプロダクトアウト(商品=自分の能力をとにかく高め、そのうちいつか誰かに買ってもらえることを祈る)からマーケットイン(最初からマーケットに受けるような商品=自分を目指す)への発想の転換ということになりますが、それを自分の人生についてここまで徹底して実践できている人というのは聞いたことがありません。

別の表現をするなら、それまで自らの「Can(できること)」の範囲を広げることを突き詰めてきた武井さんが、「Need(求められていること)」の視点を手に入れたことで、一気に人生の可能性を開花させたということでもあります。

 

武井壮 Ver.1 ("Can"の追究)

とはいえ。上記はあくまでたかだか十数年の歴史しかないVer.2の武井壮であり、彼の「獣」としての圧倒的に突き抜けた本質は、その気づきに至る前からずっと根ざしている、いわばVer.1の武井壮にこそ見てとることができます。

それを表す彼の人生のテーマが、

毎日、自分史上最高 

自らの「Can(できること)」を広げることに徹底してこだわってきた彼は、人を成長させるメソッドの引き出しが半端ではありません。

特にその根幹を支えているのは、いわば「武井壮の性能を上げる」という考え方。

野球なら野球、ゴルフならゴルフ、というスポーツ固有のスキルを高めるのではなく、あくまで「武井壮」そのものの性能を高め、思い通りに体を動かせるようになることをとことん突き詰める。

この考え方こそが、競技歴2年半で十種競技日本チャンプとなったり、日本トップクラスの選手たちが集まるゴルフの選抜強化プログラムに素人の状態で乗り込んで選抜されたり、といった彼の驚異的な経歴を実現させているのです。

例えば、

  • 日々の生活の中で、例えばペットボトルの蓋を開けるような一動作すらも、常に自分のイメージと精密にすりあわせる。
  • 毎日室内外の気温や身体中の体温、その日の服装などを記録し、ベストコンディションの導き出し方を定式化する。
  • トレーニングは短い時間でも自分の「101%」を引き出すことにこだわってデザインする。90%でトレーニングしながら、本番で自己ベストを出そうなどと都合の良い考え方はしない。

などなど。

その領域に達した人たちだからこそ分かるのでしょう、武井さんのアスリートへのインタビュー本『勝つ人』では、むしろアスリートたちの方が武井さんをリスペクトしている様子が随所から伝わってきます。

勝つ人 13人のアスリートたち (Sports graphic Number books)
 

イヌイットの言語に「雪」を表す単語がたくさんあるように、武井さんとアスリートの間の会話では「成長」とか「勝つ」ことについて、表す日本語が足りないもどかしさを感じているかのような場面がしばしば出てきます。今シーズントップクラスのオススメ本です。

 

武井壮 Ver.0 ("Want"という原点)

「成長・勝利」に関してこれだけの境地に達しているマニアとして、他に私が連想するのは格闘ゲームウメハラさんです。 

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

 

案の定というか、武井さんもウメハラさんとの対戦を目指して日々ストVのトレーニングをしているようで、 個人的にはこの対戦、日本トップクラスの「成長・勝利マニア」たちのドリームマッチとしてめちゃくちゃ注目しています。

ただ一つ違いがあるのは、ウメハラさんが「成長それすなわち生き甲斐」という変態的成長マニアであるのに対して、武井さんの場合はそこからもう一段階掘り下げたところに根源的なモチベーションがあるというところ。彼のもう一つの人生のテーマは、

少しでも多く、やりたいことをやって生きる

という非常に素朴なもの。素朴であるがゆえに、共感できる人も多いはずです。

ウメハラさんの思想の深さも相当驚異的ですが、個人的にはモチベーションのところで「成長それすなわち生き甲斐」とまでは思えない時も。そこに共感し続けられる人はある程度限られるのではないかと思っています。)

少しでも多くの「Want(やりたいこと)」を実現したいがゆえに、「Can(できること)」を広げ、さらには「Need(求められていること)」と重なる面積も増やしていく。

言葉にしてしまうとシンプルなロジックですが、それをここまで貪欲に人生を彩るべく実践している人を私は他に知りません。

彼は超多忙となった今でも、フィジカルのトレーニングに加えて必ず1日1時間新たな分野の訓練・勉強を積み重ね続けているそうです。それを彼は、「今の自分にない能力・知識を、毎日少しずつ自分にプレゼントしてあげる」という言い方で表します。なんというか、すごく背中を押される表現です。

なお、今の武井壮はまだ通過点で、彼は世界中の人に愛されるハリウッドスターを本気で目指しているそうです。当然英語も話せます。

彼の背中に勇気を与えられるような人が、少なくとも一人ここにいて、多分これからもっともっと増えていく。そんな人々のためにも、本当に世界のスターになって欲しいと思います。私も負けない(スターを目指している訳ではありませんが)。