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Aruku Blog

世界は、価値の鉱山だ。

Brexit後のロンドンに思う、「自転車」分野のポテンシャル

ヨーロッパ

Brexitから数ヶ月経ちつつも、未だその影響を見極めかねている感のあるロンドンに行ってきました。

バーで絡んできたジョンさん(仮名)。ロンドン・シティの金融マンなんてだいたいEU残留に投票したんだろうと思っていたら、「これは経済の問題じゃない!クソドイツに従ったままでいるかどうかのプライドの問題なんだ!」と熱く語ってくれました。

ロンドンは言うまでもなく欧州最大最強の都市であり、それがBrexitのせいでみるみるパリやベルリンに取って代わられる、ということにはそうそうならないでしょう。

しかし、どう頭を働かせてみても、Brexitで経済的に「プラスの影響」が出る分野をほとんど思いつけないのもまた事実。EUネットワークの恩恵を得られない唯一の欧州主要都市となっていく中で、経済的な「デカさ」を前面に出して今後もずっと競争力を保っていけるかというと、それはあまり賢い選択とは言えなさそうです。

「デカさ」が危ういなら、目を向けるポイントは他にもたくさんあります。それは例えば、都市としての「質」や「先進性」です。

ご存じの方も多いと思いますが、今、先進的な街づくりを考える上で一つの大きなキーワードとなっているのが「自転車」。

実はロンドンも、Brexit直前の今年5月まで市長を務めていたボリス・ジョンソンという方が非常に自転車普及に熱心な人で、特に2012年のオリンピック前に、自転車オリエンテッドな街にするための大改造が行われました。

なぜ自転車が街の先進性につながるかというと、

  • 環境に優しい
  • 人の健康にも優しい(肥満問題が深刻なロンドンではなおさら)
  • 路面にも優しい(道路のメンテナンス費用が少なくて済む)
  • 渋滞を起こさない
  • 安い

……などなど、自動車の普及にともなって浮かび上がってきた様々な問題が、自転車だったら起こらないじゃん!ということにみんなが気付き始めたのです。

だから逆に、特に欧州で「先進的な都市」として名前が挙がるような都市は、そのほとんどが「自転車先進都市」であったりします。ストックホルムコペンハーゲンアムステルダムなど。

 

しかし、ロンドンが自転車都市となっているのは、実は目を見張るべき例外です。上記に挙げたような「自転車先進都市」は、そのどれもが人口100万人に届くか届かないかという中堅都市。そもそもの都市のつくりとして密度がさほど高くはなく、広々とした都市空間で自転車の活用もごく自然に進められるような土台があったのです。

それに対してロンドンのようなスケールの大都市は、世界中どこを見てもひっきりなしに車が往来し、渋滞に悩まされているのが常識です。そんな中で交通網に改造を加えてまで自転車導入を進めるというのは、行政の明確かつ強固な意思がなければできません。

CS3

1車線を丸々潰して造られた自転車専用レーン。そういうレーンがある所もあります、なんて騒ぎではなく、これが文字どおりロンドンじゅうに一気に張り巡らされました。

ロンドンが自転車都市として成功すれば、それはいわば東京やニューヨークなど、世界中の大都市に対して自転車活用の可能性を示すことにすらなるのです。

 

実際のところどうなのか。ロンドン在勤の同僚たちに聞いてみる限り、やはり現状、必ずしも肯定的な意見ばかりとは言えません。

何せただでさえ世界最悪の渋滞都市であるのに、その貴重な1車線を自転車のために潰しているのです。渋滞が悪化した、というのが否定的な意見の理由の大半を占めていました。

これを解消するためには、逆説的なようですが、とにかく自転車利用率をさらに高めていくしかありません。現在車を使っている人たちに自転車にシフトしてもらうことで、車の絶対数を減らすのです。

もう後には戻れず、前に進むしかないロンドン。では、自転車利用率を高める上で、ボトルネックは何なのでしょうか?

下の2枚の写真を見比べてみてください。どちらも今年、平日の通勤時間帯に撮影したもので、上がコペンハーゲン、下がロンドンの様子です。

……パッと見て分かる最大の違いは、服装です。

コペンハーゲン市民の通勤姿が、おそらく職場でもそのままなのであろう日常的な格好で小慣れて見えるのに対して、近年ロンドンで一気に増えた自転車通勤者たちは、その多くがガチのサイクルウェアに身を固めています。

もちろん、これを単純に「自転車社会の成熟度の差だ」と断言することはできません。例えばロンドンはシティのど真ん中で撮った写真なので、スーツで働かなければいけない人が多い(→どうせ着替えが必要なので、通勤はサイクルウェア)といった事情があることは想像できます。

しかしいずれにせよ、自転車通勤を検討するにあたって、「着替え」の存在って結構影響が大きいと思いませんか?いま自転車通勤をしている人は、「その面倒くささを乗り越えてまで」自転車通勤をしようと思えている人、だけなのです。このハードルを取り払うことができたら、自転車通勤者の数をかなりの割合で増やせるのではないかと思います。

この点に対して有効と思われる対策としては、たとえば以下のようなアプローチが考えられます。

1. 「サイクル対応」のオフィスウェア

既に市場にはポツポツと存在しますが、むしろいま自転車通勤をしていない層にこそもっと売り込めるはず。「着替えなくても自転車通勤はできるんです!」と。繊維大国ニッポンにとっても腕の見せ所ではないでしょうか。

マーケットとしての日本の夏は高温多湿すぎるので、さすがに着るものでどうにかなるレベルではないのが残念ですが……。

2. バイクステーションの増設

ランナーステーションの自転車版ですね。シャワー・着替えは必要なものという前提で、その代わり街じゅうどこでも手軽にできるようにする。さらに自転車メンテナンスやカフェのようなサービスもくっつけてみたり。こちらのアプローチであれば、日本でも通用します。

こちらも既に世の中に存在しないわけではありませんが、今一つ普及が進まないのはやはり数が少なく、ドアツードア性を損なってしまうというところでしょうか。

 

どちらのアプローチにせよ、自転車という乗り物のポテンシャルを解放するようなビジネスは、今後ロンドンに限らず世界中の都市で価値が大きいと思うのです。

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