aruku note

世界は、価値の鉱山だ。

ドバイが起業に最適である理由。現地VCに聞きました

私自身あまりTechTechした人間ではないのですが、ストックホルムでスタートアップに突撃した時のインタビューがすごく楽かったので、未だにニヤニヤしています。ビジネスセンスに刺激を受ける話というのは何でも面白いです。

aruku000.hatenablog.com

しかしこの「(自称)ブロガー」というのは便利な肩書きで、見ず知らずの相手にインタビューを申し込んでもわりかしOKを頂け、非常に面白い話が聞けてしまいます。

「ならドバイでも同じことやったれ」と思い、今回はドバイの有力VC、TURN8にお邪魔しました。

今回インタビューに応じてくださったのは、Portfolio ManagerのNour Halabiさん。アメリカ生まれ、ドバイ育ち、ハーバード卒のシリア人です。グローバルぅ。

(ご本人の写真撮り忘れたので、インタビューの場となった応接室だけ…)

そもそもアクセラレータという業種の定義については私自身もあいまいだったのですが、簡単に言えば「シリーズAよりも前、いわゆるシード段階の事業(あるいは事業アイデア)に、ごく少額の出資とインフラ・人脈などのサポートを提供し、数週間〜数ヶ月の間に本格的に投資家に声を掛けてもらえるレベルまで持っていく」ようなVCを指します。

なぜ、ドバイでVCなのか

バイにスタートアップのエコシステムなんて根付くのか?というのが最初の疑問だったのですが、まさにそれが、TURN8がアクセラレータという形で事業を展開している理由だそう。

「ドバイ自体を、スタートアップがぐんぐん育つ集積地にしていこうとは思っていません。シリコンバレーシンガポールと比べたら、ドバイはインフラ面もカルチャー面も何周も周回遅れですからね。しかし、この国は自前の産業基盤が乏しいかわりに、『世界中の最高級・最先端なモノのショーケース』というポジショニングで成功している。事業コストも低いし、シード段階のスタートアップが芽を出すまでの期間に限れば有数の環境だと思います」

この「ショーケース」という表現は、ドバイに住んだことのある人なら誰もが言い得て妙とうなずくはずです。良く言えば豪華絢爛、悪く言えばこけおどし。

バイと聞くとこーんな摩天楼だらけのイメージがあるかもしれませんが、

Dubai Marina

都市の最中心部でさえ、もうちょっと視野を広げるとこんな感じです。

都市最大のメインストリートの両脇には確かに高層ビルが並び立っているのですが、それだけ。上の写真はまだ海岸側を写しているので建物が見えますが、内陸側はガチの砂漠が延々と広がっています。

更に、ある意味「本当のドバイ」である旧市街地などは、UAEというよりももはやインドです。このあたりはまた別の記事で詳しく書こうと思いますが、今も昔も出稼ぎ労働者で成り立っている国なので、最大派閥はインド人、街の雰囲気もインドのそれで、物価水準も「キラキラエリア」からはだいぶ下がります。

つまり、

「確かに物価が高いエリアは高いけれども、そうでないエリアに土地はありあまっているし、安く暮らそうと思えばけっこう安く暮らせる。そして、何といっても税金がほぼタダ。そんなおいしい条件がそろっている場所って、世界中探してもそうそうありません」

ということなのです。 

アクセラレーションの、その先

ただし冒頭にもあった通り、スタートアップが芽を出した後、「育っていく」ステージにドバイは必ずしも適していません。

「少なくとも今現在は、アラブ人のお金持ちの間に、スタートアップに投資するという文化はないんです。中東の既存企業がスタートアップに関わりを持つ場面としては、単発の『発注』がせいぜい。そこから更にリスクを取って、『出資』まで踏み込むケースはほとんど目にしませんね」

だからTURN8は世界中に拠点を構えており、アクセラレーションに成功したスタートアップを、その中から最も適したエリアに送り込むことを一つのゴールとしています。

「たとえばシンガポールフィンテック、ヘルスケア、AR/VRといった分野が伸びているし、シリコンバレーではハードウェアやロボティクスといった分野で圧倒的にリードしています。こういった地域ごとの特性も念頭に置きながら、TURN8の各拠点で投資家とのネットワークを広げていて、アクセラレーション後のスタートアップを彼らに紹介できるようにしています」

そんなモデルを象徴するように、オフィスの中には専用の「ピッチ部屋」があります。ここでTURN8を「卒業」しようとするスタートアップが、世界各国の投資家に品定めしてもらうのです。

「我々はあくまでシードステージのお手伝いなので出資金額は$30K〜$80K程度ですが、ピッチ部屋だったり、無料のコワーキングスペースだったり、提供しているインフラは実ニーズに応えたものなのでガンガン活用されています。実は今年中にもキャパ拡大のためにオフィス移転予定なんです。文字通り『紙と鉛筆』(試作品も何もない、純粋なビジネスアイデア)の段階で来てもらって支援を決定したスタートアップもたくさんありますし、アクセラレーションに特化しているからこそ、シードステージ特有のニーズにしっかりフィットできていると自負しています。

そうそう、今回インタビューの話を聞いて乗り気になった理由のひとつは、TURN8はこれだけ世界展開しているのに、日本からのスタートアップだけはまだ一社も出てきたことがないんです!日本はレベルの高いプロダクトやサービスが溢れていて、VCとしても興味深く注視している国なので、一歩を踏み出してくれる起業家をお待ちしています!」

 

※もし実際にTURN8のアクセラレーションに興味を持たれ、紹介して欲しいという方がいらっしゃいましたら私のTwitter (@aruku000) へのDMでご連絡ください。