aruku note

世界は、価値の鉱山だ。

絶対に「来る」ストックホルムの怪物スタートアップ、truecallerに突撃インタビュー!(前編)

今回の休暇では北欧を旅してきました。中でもスウェーデンの首都ストックホルムは、シリコンバレーに次ぐ世界第2位のスタートアップ都市と言われており、きわめて興味深い場所だ…というのは前回の記事でご紹介した通り。

で、あれば。どんな観光スポットを差し置いても、スタートアップを見物せず帰る訳にはいくまい。

という野次馬根性で、「Stockholm startup」でググって出てきた適当な会社にメールを送り付けたのが一週間前でした。

日本語だしどうせ分からないであろうと、この泡沫ブログを根拠に「Japanese blogger」を名乗っての取材依頼。自分なら絶対断るなぁ……と正直あまり期待していなかったのですが、意外にも5社中2社から快諾を頂き、じっくりとお話を伺うことができました。

truecallerを知っていますか

1社目は、スマート電話帳アプリを提供するtruecaller

イエローページをクラウドデータベース化したようなアプリで、自分の端末の電話帳に登録していない相手でも、truecallerのデータベースに載ってさえいれば、名前から検索して電話番号を知ることができます。

また逆に着信時にも、端末への登録有無にかかわらず発信者情報を表示してくれます(スパム報告の多い番号であればブロックできる)。


The New Truecaller – A smarter way to make calls

正直、下調べの時点では「ふーん」としか思わなかったのですが……。このプロダクトのポテンシャル、相当ヤバいです。そのあたりはまた後ほど解説します。

いざオフィスへ

シリコンバレーと違って都市自体は古くからの歴史があるので、建物の外観は「いかにもスタートアップ!」という感じではありません。

少々わかりづらいですが水色の旗にtruecallerと書いてあります。

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オフィスに入ると、卓球台、そしてオシャレなリラックススペース。ああ、スタートアップですね。

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さて、今回出迎えてくれたのは渉外責任者のKim Fai Kokさん。ルーツはマレーシアの華僑ですが、生まれも国籍もスウェーデンです。80人前後の同社で4番目の古参とのこと。以下、彼との一問一答です。

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どんな経緯でtruecallerに参画したんですか?

スウェーデンの大学で国際ビジネスを専攻していたんですが、途中でオリンピック当時の北京やW杯当時の南アフリカに留学して、世界中からクールな人たちが集まるのに触れ合うことができたんです。それがすごく刺激的で、キャリア観に大きく影響を受けた。

中でも当時、新たなビジネス領域として黎明期だったスマホアプリの産業に興味を引かれました。

実はCEOのAlanは大学時代のメンターとして知っている相手だったので、卒業と同時に彼に掛け合いました。会社は立ち上がったばかりで私に給料を払えるようなお金は無くて、無給とせざるを得ない状況だったのがネックでしたが……

無給でですか!?すごい決断ですね。

周りからは当然、何をバカなことを言ってるんだと大反対されました(笑)。

でも、こんなチャンスは無いと。こんなに面白くて、世界を変えうるようなビジネスに、どうしても自分も参加したいと思いました。

技術系のスキルがある訳でもなかったので、最初は本当に雑用係。みんなの朝食を用意したり、オフィスを掃除したり……。でも結局、無給期間は数ヶ月に留まり、ちゃんと給料を貰えるようになって今に至っています(笑)。創業メンバーとして持ち株もありますしね。

なるほど。当時の会社の陣容は?

まずCEOと、共同創業者。それに現CTOがいて、3人ともバックグラウンドは技術系。その次に入ったのが私ですね。

ちなみにCEOは私と同じで国籍はスウェーデン人ですが、ルーツはクルド系。同じく共同創業者はイラン系、CTOはトルコ系です。この多様性に富んだ文化も当社の魅力・強みの一つだと思っていまして、現メンバーは約80人ですが、40以上の国籍で構成されたチームになっています。

truecallerの、プロダクト面の強みは何でしょう?そもそも私、このサービスの軸が何なのか今ひとつ分かっておらず……スパムブロッカーとして優れている、とか?

いえ、もっと根本的な問題を解決しているのがtruecallerなんです。

そもそもの発想は、電話番号というものが発明されてから相当な時代を経ているにもかかわらず、なぜこんなにも進歩していないのか、という問題意識から出発しています。

例えばメールアドレスであれば発信者のドメインが分かり、IPアドレスが分かり、さらに署名を付けていれば大方の基本情報が分かる。それに対して電話というのは未だに、知らない番号から掛かってきたら何も分からない。番号そのもの以外、ひも付いた情報が何も無いですからね。

だからこそ、AppStoreも無いような時代(携帯にアプリを入れるということが、パソコンやら専用ケーブルやらを動員したややこしい特殊な作業だった時代)にリリースして、初週で1万ダウンロードという結果に繋がった。

そんな時代があったことすら知りませんでした。状況を考えると相当な数字ですね。

そうなんです。今はさらに、インドや中国といった新興マーケットへの進出に力を入れていますが、向こうでは尚さらヒットしています。

なぜなら、新興国スマホに触れ始めた層の人たちにとって、Eメールはまったく身近なものではないんです。先進国にいると、メールアドレスというものをもはや当たり前のような存在のように考えてしまいますが。

だから、先進国でよくメールアドレスを記入してアカウントを作るのと同じような感覚で、電話番号が唯一の個人認証の手段となっています。その電話番号にひも付いた情報のデータベースを提供しているので、当然重宝される。

素晴らしい!Slush(フィンランドのスタートアップイベント)でも、新興国戦略のポイントをCROのAlanさんが話されていましたね。


Building Apps For Fast Growth Markets by CEO of Truecaller

ええ。プレゼンでも説明されていたように、新興国で売られている格安仕様のスマホは、データ容量が先進国のものよりはるかに小さい。

だから先進国マーケット以上に、画面下の「常駐アイコン4つ」のスペースに入れてもらえるかどうかに全てが懸かってきます。それ以外の「あったらいいけど、なくてもいい」みたいなアプリを、入れてもらえる容量なんて無いんです。

そういう「必需品」のアプリとして、truecallerは認識してもらえている。新興国での拡大が順調に進んでいるのも、そのおかげですね。

私はてっきり、インド市場に精通した凄腕マーケターがいたのかと……

実は、そういう属人的な要素は本当に無いんです。アプリをリリースして、それがマーケットに受けて、あくまで自然発生的にヒットした。これに尽きます。

普通、スマホアプリに手を出す時点で、対象ユーザーは「スマホユーザー、かつ、〇〇」となってしまいますよね。Airbnbであれば、スマホユーザー、かつ、旅行者。Kindleであれば、スマホユーザー、かつ、読書好き。

それがtruecallerの場合、スマホユーザーほぼ全てがそのまま対象となるんです。何せ電話という、スマホの一番根本的な機能を押さえているわけですから。これもヒット要因ですね。

以降、後編へ続く!