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世界は、価値の鉱山だ。

とあるトップセールスの営業論① 戦略・戦術編

「営業」という分野は、例えば「マーケティング」や「ファイナンス」に比べると、多少ソフトスキル的な側面が強いことは否めません。

世の中には「100の心得」みたいな単なるノウハウの寄せ集めではなく、営業について体系的な分析を行った素晴らしい考察もきちんと存在します。にもかかわらず、ファイナンスの専門家などに比べると、そういったものを積極的に勉強することなく、曖昧なKKD(勘・経験・度胸)に頼ったままの営業マンが多いことは紛れもない事実なのです。

何を隠そう私もその一人だった訳ですが、ここ最近思い立って集中的に勉強した内容も集約しつつ、トップセールスのはしくれなりの営業論をここでまとめてみたいと思います。

プロセスのフレームワーク

まずは自社の営業プロセスをとことん明確に定義しましょう。「リードを見つける→交渉・受注する→アフターフォロー」とかではなく、もっときめ細かく分解していったら、一連のプロセスは個々の商売によってかなり異なるはずです。

その中で、自分たちが競合と比べて勝っているのはどこなのか、負けているのはどこなのか。あるいは、ライバルの営業マンと比べて自分個人はどうなのか。これを改めて見つめ直してみるだけでも、KKDの営業からは一線を画すことになります。

私の場合、営業プロセスは以下のように定義していました。

  1. 戦略の策定、戦術の準備
  2. コンタクト、関係構築、顧客課題の探り
  3. 提案磨き、意思決定者の押さえ、契約履行

社内的には一番注目される「クロージング(契約獲得)」は、私の商売の場合 3.の中の「提案磨き」を繰り返す中のどこかでポロッと生まれるものなので、それ自体をプロセスとして定義し掘り下げる意味はあまり無いと判断しました。もちろんそうではなく、クロージングのせめぎ合いこそが結果を大きく左右する商売もあると思います。画一的な正解はありません。

今回は①戦略の策定、戦術の準備について書いてみたいと思います。

営業マンと戦略の微妙な関係

いきなり前提を覆してしまうのですが、私の経験上、やたら声高に「戦略」を叫ぶ営業マンにズバ抜けたハイパフォーマーはほとんどいないと考えています(笑)

特にある程度成熟した業界・商品の場合は顕著なのですが、いかにエレガントな戦略があるかよりも、どれだけ足元の戦術・戦闘を仕組み化し徹底できているかの方が、営業成果に大きな差を付ける場合が大半だからです。

本気で日々の営業活動を突き詰めようとしていたら、大風呂敷の理想論で「うちの組織には戦略が無い」などと愚痴っている暇は普通そんなにありません。

なので営業マンにとっての戦略とは、マーケティングでいうSTPくらいのごくシンプルな内容で構いません。

戦略の内容を緻密に作り込むよりも、それをお題にして、チームメンバー各々の仕事に対する思いを語り合うために利用した方が有益です。マネージャーが替わるたびに一生懸命戦略を書き換える、それがマネージャーの仕事だと思っている、などというのは最悪です。戦略「を」語るより、戦略「で」語ることに時間を使いましょう。

理論的なメソッドが強固でない分、営業ほど人の思いに結果が左右される仕事はありません。だからチームの思いを練り上げ高めておくことは、どんな素晴らしい戦略よりも威力を発揮してくれるのです。

もちろん自社の衰退が目に見えていて、いくら目の前の業績を支えても、戦略自体を方向転換しなければ未来が無い、という場合はあります。ただ、そこにいかにメスを入れていくかという問題は、「営業」というより「経営」の問題です。

「こんな商売に未来は無い」と見通すのはすごく簡単なことですが、その問題を実際に解決できるかどうかは、それだけで本が何十冊も書ける話になってしまいます。

営業マンは経営に口を挟まずソルジャーとして頑張ろうという意味ではなく、むしろその逆です。戦略改革に関わるなら、営業の片手間などではなく、血を見る覚悟で取り組む必要があります。ただ抽象論をもてあそぶだけの中途半端な経営者ワナビーは、ソルジャーよりもよほど価値がありません。

戦術の主役は「課題・問題」

さて、営業マンにとって「戦略」を元に考えるべき「戦術」とは何でしょうか。まだ個別の案件での戦い方というところまで行かずに、あなたの「武器」や「得意技」という視点で考えてみましょう。

私がおすすめするのは、戦略で定めたSTPにおいてハマりそうな、課題解決の「ストーリー」を持っておくことです。顧客が持っている典型的な課題・問題をできるだけ具体的に定義した上で、自分たちがそれを理解している・解決できるということを、説得力あるストーリーとして示せるようにしておくのです。

プロダクトアウトという言葉もありますが、よほど圧倒的な商品を持っていない限り、こと営業においては顧客視点(マーケットイン)を徹底することが基本です。例えば……

弊社のシステムは、以下のような悩みをお持ちのお客様から支持を頂いています。

  • 現在使用しているシステムでは、導入前にはできると説明されていたことが、実際に導入してみると難しい、面倒が多い。
  • システムの誤作動や情報漏洩が、ビジネスへの致命的なダメージに繋がるという不安がある。
  • カスタマーサービス担当者の知識・スキルレベルにムラがあり、対応力の低さに不満を感じることがある。
  • ・・・

 上記のストーリーでは、自社の商品についての言及が一言たりともありません。にもかかわらず、「この会社の話は聞いても良さそうだ」と思う見込み客がいそうなこともイメージできるかと思います。

これはあくまで一例ですが、顧客視点をここまで徹底してしまうこともアリなのです。実際、カリスマ販売員の通販番組なんかも、よく見ると商品についての説明ではなく「主婦のよくある悩み」から入っている場合が多いですね。

こういうストーリーを自分の武器として組み立てておき、実戦で試しては改良を加える、ということを繰り返していくと、営業マンの戦闘力は飛躍的に向上します。