aruku note

世界は、価値の鉱山だ。

シェアリングエコノミー、その本当のヤバさを理解していますか

シェアリングエコノミーが熱い。……ということはずいぶん前から言われており、もはや何となく常識となりつつあります。では、そもそもシェアリングエコノミーとは何でしょうか。

「なんかアレだよね、ネットが発達して人と人が繋がりやすくなったから、いろいろシェアしやすくなって便利で経済的だよね」

いざ説明しろと言われると、これくらいの漠然としたイメージという人が大半ではないでしょうか。これも間違ってはいないのですが、しかし、シェアリングエコノミーの可能性、その根底にある示唆の深さは、もっと深く、もっと広く、とてつもなく面白いのです。

3つの新潮流

一時期このテーマに関連する書籍を読みあさったのですが、その中でも頭ひとつ抜けたオススメはこの一冊(日本語訳は少々……ですが)。

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

  • 作者: レイチェル・ボッツマン,ルー・ロジャース,小林弘人,関美和
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2010/12/16
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 28人 クリック: 1,325回
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同書が指摘する、社会に生まれつつある大きな新潮流は以下の3つです。

1. プロダクト・サービス・システム(PSS)の隆盛

端的に言えば「所有から利用へ」。モノを「購入・所有」させずに、「利用」だけさせて対価を得るサービスをPSSと言います。古典的な例は図書館やコインランドリーですね。

最近の例では、タイムズのようなカーシェアリング。単に車を買うより安いというだけでなく、「今日はベンツ、明日はBMW」といったような楽しみ方も可能だし、自分が利用している時間以外の車の維持・管理は一切気にする必要がありません。

クルマに限らず、冷静に考えれば「利用」だけした方がはるかに合理的で、しかもインターネットの普及前からそのような取引が可能であったようなモノは、世の中にいくつも存在します。

にもかかわらず、なぜこのようなサービスが「今さら」注目を浴びているのか。考えるべきはむしろこのポイントでしょう。

答えは単純、今までが異常だったということです。大量消費社会で売上を伸ばそうとしのぎを削る企業たちが編み出した禁じ手、それは「購入・所有」への幻想を煽って煽って煽りまくること。この魔法が、今になってようやく解けつつあるのです。

人間の際限のない欲望を喚起するという目的のために、とことん科学的に研ぎ澄まされた広告理論。計画的に陳腐化し、新モデルへの需要を引き出すことが最初から組み込まれた商品設計。

企業が英知を結集して練り上げたこれらの「魔法」の前に、消費者個々人の脳ミソはあまりにも無力でした。

PSSの隆盛は、この魔法から目覚めた人たちが、世の中で徐々に増えていることを意味しています

「あなたの所有欲を刺激する……」みたいな広告のうたい文句、いまだに目にしますが、これほど時代遅れでセンスのないフレーズも無いということですね。だいたい対象はオッサン向けの商品。世の中で魔法が最後に解けるのはオッサンたちなのでしょう。

2. 中古市場の拡大(同書では「再分配市場」)

メルカリが好調ですが、他にも物々交換やフリーマーケットのようなサービスは海外でも近年勢いを増しています。PSSの主役の多くが企業(B2B/B2C)であるのに対し、こちらは個人どうし(C2C)のシェアが中心になります。

これについてはまさに冒頭に書いたように、インターネットの普及がモロに最大の立役者と言って問題ないでしょう。

実世界で中古のモノを買い取ってもらえる値段が低い最大の要因は、単純にマーケットの大きさの問題です。

古着屋なんかはまだ「古着」というマーケットが確立されているからマシですが、例えば「加湿器」を買おうと思った人は、ふつうリサイクルショップではなく家電屋に行きます。リサイクルショップに加湿器が置いてある可能性はあまり高くないからです。だからリサイクルショップの店主は不良在庫化のリスクを頭に入れ、加湿器を二束三文で買うしかありません。

これが全国津々浦々から出品されるメルカリのようなネット上のプラットフォームの場合、加湿器が欲しい人も「とりあえずメルカリ見てみようかな」と考える可能性は十分あるし、出品者側もそれなりに自信を持って正当な値付けができるわけです。

ネットだから高値で・早く売れるというよりも、実世界では物理的制約のせいでなかなか正常な機能を発揮しづらい中古市場という仕組みが、ネットのマッチング力によって本来の力を解き放たれつつある……と言ってよいでしょう。

3. 信用・価値の源泉の変化(同書では「コラボ的ライフスタイル」)

第3のポイントは、コミュニティこそが最強の価値の源泉となる時代になりつつあるということです。

ナイキというメガブランドでさえ、製品広告を打つことからコラボ的なコミュニティを築くことに、ブランドの軸足を移しつつある。
(『シェア <共有>からビジネスを生み出す新戦略』より)

消費者は徐々に「魔法」から解放され、広告を介さない消費者同士の中古商品のやり取りも勢いを増している。そんな中で、企業が発するどんな売り文句やクールな商品イメージも、口コミには敵わなくなっています。

だから今や、コミュニティを耕すことこそ最強のプロモーション。「ナイキの商品」ではなく、「ナイキファンというコミュニティ」に属すことに価値を感じてもらうべく最大の努力を尽くすのです。

これは商品の価値に限ったことではなく、例えば個人の信用についても同じこと。

お金の貸し借りというのは、元々はそもそもコミュニティ内での評判をもとに行われていました。借り手、貸し手、そして彼らの素行を知っている証人、この三者がいれば成り立ったのです。

それが取引の巨大化・遠隔化にともない、銀行という仕組みが生まれたことによって、一括管理しやすい「信用履歴」という単純なデータが重要視されるようになりました。これもまた、価値観としては大量生産・大量消費の「魔法の時代」に非常に近しいものがあります。

これにより一時は影を潜めたコミュニティ型取引のモデルでしたが、今また再び、マイクロファイナンスやファンドレイジングのような古くて新しい金融モデルが勢いを増しています。

単なる「カネを返したか・返してないか」ではなく、カネの出し手がカネの受け手それぞれの様々なバックグラウンドやビジョンを鑑みながら、投資・融資に値すると思ったらそれを実行することができる。自分の「バックグラウンドやビジョン」がきちんと信用に値するという証明は、SNSによって昔より遥かに示しやすくなりました(例えば実名でFacebookをやっていて、友達が数百人以上いて、投稿内容も不自然でなければ、まずその名前で詐欺めいたことをしているとは考えづらい)。

同時多発の化学反応

さて以上、シェアリングエコノミーの三本柱となっている変化、その潜在的インパクトの大きさについて解説してきました。

それを踏まえて結局何が言いたいかというと、シェアリングエコノミーというのは何かそういう新しいマーケットが生まれましたよ、みたいな個別レベルの話ではなく、そもそも経済の土台になっている価値観そのものの大転換である、ということです。

さまざまな変化が同時多発的に、お互い化学反応して強化し合いながら経済のあり方を塗り替えつつあるのです。使い古された言葉ですが、パラダイムシフトというやつですね。

南インドの楽園、ケララ州探訪記。あと、「観光」のイノベーションについての考察

12月は筆不精になってしまいましたが、公私でさまざまな国を旅して回る刺激の多い月になりました。中でもヒットだったのは、週末弾丸旅行で出かけたインド・ケララ州。

だったのですが、そんな小賢しいことを考えなくても、旅先としてケララ自体が十分に魅力的でした。日本人にはなじみの薄い場所ですが、「いわゆるインド」の有名都市とはまた違った味わいがあり、ヨーロッパ人の間では知る人ぞ知る楽園だとか。 

例えばこれ。


船で商品を仕入れ、船でお客さんが来るドリンクスタンド。

異世界のような森の中で干されている洗濯物。

バックウォーターと呼ばれる水辺に囲まれた、アレッピーという町の風景です。ボートに乗ってクルージングできるのですが、南国風情満点のヤシの林の中で、のどかに暮らす現地の方々の暮らしを間近に見ることができます。

(あまり人の日常生活にカメラを向けるのは行儀がよろしくないと思いつつ、非常に印象深い光景だったので……。)

もちろん経済的には先進国と比べるべくもない水準での生活ですが、だからといって悲壮感があるわけでも全くなく、豊かさって何だろう、などと妙に深い問いを考えさせられます。

 

あるいはこちら。

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14世紀に中国商人から伝来され、未だに現役の定置網漁法。1機あたりに5-6人の作業夫がついて1日200回ほどの上げ下ろしを行い、作業夫70:網のオーナー30の割合で収益配分がなされるのだとか。

網を買うのに必要なお金は「だいたいBMW1台分くらい(!)」だそうで、しかも一度買ったら放ったらかしというわけにもいかず、年に2回はメンテや修理が必要とのこと。

獲れている魚の量から見ても、とても割に合う事業とは思えません。。お家元の中国で既にこんなものにお目にかかることは無い事実が、全てを物語っているのではないでしょうか。見ている分には風情もあって、すごく面白いんですけどね。

 

こちらもまた凄かった。 

大英帝国時代から続く茶のプランテーション。山の斜面を一面茶畑にすると、こんなに美しい風景になるんですね。

近所にばっちり「ケララの茶の歴史博物館」もあって、いかにプランテーションが地域の発展に寄与したかというプロパガンダっぽいムービーなども観られるのですが、実態としてはこちらもまた明らかな衰退産業。

茶摘み労働者の賃金は1日あたり数ドル程度で、ノルマを超えた分はキロあたり数セントの出来高報酬……。この数字を淡々と説明するガイドさんに、私が支払った額はそのン十倍……。

 

他にも印象的な風景はまだまだ沢山あるのですが、ともあれ、これらの観光にはある共通点があります。

それは、観光の対象となっている「景観」を提供している人に、観光客である私からは1円もお金を落とせていないこと。

これは経済学的には外部経済というやつで、その「景観」の供給に貢献せず稼いでいる観光ガイドさんは「フリーライダー」であるということになります。

こうなると、いろいろと不合理なことが起こります。

 

たとえば前出の漁師や茶畑農家が生んでいる価値は、「魚の漁獲高」「茶の収穫高」だけではなく、それによって生まれている景観の価値、もっと言えば「観光収入」です。というか、下手したらそっちの方が大きい。

にもかかわらず、彼ら自身が受け取るのは「漁獲高」「収穫高」の対価のみ。経済発展の浸透につれて、周囲がもっと良い生産性・対価の仕事で溢れるようになれば、いずれ廃業となります。

でも、廃業によって失われる地域としての観光収入は、彼らの転職による生産性アップ幅よりもずっと大きいかもしれません。

 

他にも考えられる問題点としては、こういった景観の供給者に、「観光価値を維持・向上する」ためのインセンティブが存在しないこと。

別に彼ら自身は観光客に景観を提供するために日々の営みを送っているわけではありませんから、当たり前といえば当たり前です。

アレッピーの人々は黙々と洗濯するだけで私に生活体験をさせてくれるわけではないですし、漁師はゴミだらけの海岸をきれいにせず、茶摘みの人たちはいちばん写真映えしそうな稜線に茶を植えてくれません。(まぁ、ありのままの姿だからこそ面白い部分は大きいのですが……)

 

このように、「市場原理を介さない価値のやりとり」は世の中の価値の総量を減らしている、逆に言えば、それを解決することは世の中にとってプラスである、ということに一応なっています。

AirBnBがやったように、市場原理の外側にあったもの(たとえば空き部屋という資源)をマーケット化するしくみを提供すること。これが世の中に与えるインパクトの大きさは、ときに計り知れないものがあるのは今や周知のとおり。

うーん、我ながらおもしろい論点なんだけど、ビジネス化は成り立つでしょうか。もうちょっと考えてみないと…。

武井壮という男の凄さについて、ロジカルに語ります。

突然ですが、私の尊敬する人は武井壮さんです。

この尊敬する人リストには日本なら孫正義さん、海外ならペップ・グアルディオラ監督、歴史を遡れば内村鑑三などそうそうたる顔ぶれが並んでいるわけですが、そんな強者たちを抑えて私にとって堂々の第一位が武井壮さんなのです。

それだけすごい人であるにもかかわらず、まだまだその真髄が広く世の中に理解されていないような気がするので、今日は彼の何がそこまですごいのかについて言語化してみたいと思います。

 

武井壮 Ver.2("Need"への気づき)

武井さんは、30歳ごろにある転機を迎え、その学びから一つの人生哲学を導き出しています。

価値とは、人が求める数である

「チャンピオンになれるスポーツ」を求めて陸上十種競技を始め、わずか2年半で本当に日本チャンピオンとなってしまった武井さん。

にもかかわらず、世間一般から見れば何の注目も集まらず、経済的にも大したインパクトは無く、「チャンピオンとなった結果がこれか」と愕然とします。その根本的な理由を考えた末に、たどり着いた結論が「価値とは、人が求める数である」というものです。

十種競技というものを、わざわざお金を払ってまで観たいと思っている人がどれだけいるか。自分がいくら競技のパフォーマンスを高め、ついには日本の頂点にまで立っても人生の豊かさに繋がっていないのは、十種競技によって人を喜ばせたり、感動させたり、価値を与えられる数があまりにも少ないからだ。

そう思い至った彼は一転、「多くの人を喜ばせられる職業」として、芸能界入りを目指しはじめたのです。そのときの努力もまた半端ではありません。

芸能人の集まる西麻布や六本木のバーで、服にICレコーダーを忍ばせつつ、ロックグラスで牛乳を飲みながら犬用の骨みたいなガムをかじる。

そのICレコーダーから、芸人さんが笑いをとった会話の場面を編集してCDにし、何百回も繰り返して完全コピーできるようになるまで暗唱する。

「変な奴だな」と芸能人に声を掛けられれば、待ってましたとばかり「百獣の王になりたくて顎を鍛えてるんです」と返答し、人脈を築きながらみごとTVデビューの糸口を掴んでいます(初期の百獣の王キャラは演じていたと本人も認めています)。

そして「芸能人・武井壮」として金メダルを取ったマスターズ陸上は、現役時代よりもはるかに大きなニュースとなり、人々に夢を与えられた。 

こうした学びから武井さんは、ある分野が社会的な価値を生むかどうかも分からない・判断できない子どもを、特定のスポーツエリート育成の道へ送り出すことにも警鐘を鳴らしています。

そうではなく、「無駄にならない努力」の積み上げ方、そしてそれによって着実に夢を叶える背中を見せて、「お前もこうやって夢を叶えられるんだぜ」と示すのが大人の役割だろう、と。


【武井壮の「大人の育て方」がマジ凄い!】オトナの学校 完全版

ビジネス的に言えば、要はプロダクトアウト(商品=自分の能力をとにかく高め、そのうちいつか誰かに買ってもらえることを祈る)からマーケットイン(最初からマーケットに受けるような商品=自分を目指す)への発想の転換ということになりますが、それを自分の人生についてここまで徹底して実践できている人というのは聞いたことがありません。

別の表現をするなら、それまで自らの「Can(できること)」の範囲を広げることを突き詰めてきた武井さんが、「Need(求められていること)」の視点を手に入れたことで、一気に人生の可能性を開花させたということでもあります。

 

武井壮 Ver.1 ("Can"の追究)

とはいえ。上記はあくまでたかだか十数年の歴史しかないVer.2の武井壮であり、彼の「獣」としての圧倒的に突き抜けた本質は、その気づきに至る前からずっと根ざしている、いわばVer.1の武井壮にこそ見てとることができます。

それを表す彼の人生のテーマが、

毎日、自分史上最高 

自らの「Can(できること)」を広げることに徹底してこだわってきた彼は、人を成長させるメソッドの引き出しが半端ではありません。

特にその根幹を支えているのは、いわば「武井壮の性能を上げる」という考え方。

野球なら野球、ゴルフならゴルフ、というスポーツ固有のスキルを高めるのではなく、あくまで「武井壮」そのものの性能を高め、思い通りに体を動かせるようになることをとことん突き詰める。

この考え方こそが、競技歴2年半で十種競技日本チャンプとなったり、日本トップクラスの選手たちが集まるゴルフの選抜強化プログラムに素人の状態で乗り込んで選抜されたり、といった彼の驚異的な経歴を実現させているのです。

例えば、

  • 日々の生活の中で、例えばペットボトルの蓋を開けるような一動作すらも、常に自分のイメージと精密にすりあわせる。
  • 毎日室内外の気温や身体中の体温、その日の服装などを記録し、ベストコンディションの導き出し方を定式化する。
  • トレーニングは短い時間でも自分の「101%」を引き出すことにこだわってデザインする。90%でトレーニングしながら、本番で自己ベストを出そうなどと都合の良い考え方はしない。

などなど。

その領域に達した人たちだからこそ分かるのでしょう、武井さんのアスリートへのインタビュー本『勝つ人』では、むしろアスリートたちの方が武井さんをリスペクトしている様子が随所から伝わってきます。

勝つ人 13人のアスリートたち (Sports graphic Number books)
 

イヌイットの言語に「雪」を表す単語がたくさんあるように、武井さんとアスリートの間の会話では「成長」とか「勝つ」ことについて、表す日本語が足りないもどかしさを感じているかのような場面がしばしば出てきます。今シーズントップクラスのオススメ本です。

 

武井壮 Ver.0 ("Want"という原点)

「成長・勝利」に関してこれだけの境地に達しているマニアとして、他に私が連想するのは格闘ゲームウメハラさんです。 

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

 

案の定というか、武井さんもウメハラさんとの対戦を目指して日々ストVのトレーニングをしているようで、 個人的にはこの対戦、日本トップクラスの「成長・勝利マニア」たちのドリームマッチとしてめちゃくちゃ注目しています。

ただ一つ違いがあるのは、ウメハラさんが「成長それすなわち生き甲斐」という変態的成長マニアであるのに対して、武井さんの場合はそこからもう一段階掘り下げたところに根源的なモチベーションがあるというところ。彼のもう一つの人生のテーマは、

少しでも多く、やりたいことをやって生きる

という非常に素朴なもの。素朴であるがゆえに、共感できる人も多いはずです。

ウメハラさんの思想の深さも相当驚異的ですが、個人的にはモチベーションのところで「成長それすなわち生き甲斐」とまでは思えない時も。そこに共感し続けられる人はある程度限られるのではないかと思っています。)

少しでも多くの「Want(やりたいこと)」を実現したいがゆえに、「Can(できること)」を広げ、さらには「Need(求められていること)」と重なる面積も増やしていく。

言葉にしてしまうとシンプルなロジックですが、それをここまで貪欲に人生を彩るべく実践している人を私は他に知りません。

彼は超多忙となった今でも、フィジカルのトレーニングに加えて必ず1日1時間新たな分野の訓練・勉強を積み重ね続けているそうです。それを彼は、「今の自分にない能力・知識を、毎日少しずつ自分にプレゼントしてあげる」という言い方で表します。なんというか、すごく背中を押される表現です。

なお、今の武井壮はまだ通過点で、彼は世界中の人に愛されるハリウッドスターを本気で目指しているそうです。当然英語も話せます。

彼の背中に勇気を与えられるような人が、少なくとも一人ここにいて、多分これからもっともっと増えていく。そんな人々のためにも、本当に世界のスターになって欲しいと思います。私も負けない(スターを目指している訳ではありませんが)。

ドバイが起業に最適である理由。現地VCに聞きました

私自身あまりTechTechした人間ではないのですが、ストックホルムでスタートアップに突撃した時のインタビューがすごく楽かったので、未だにニヤニヤしています。ビジネスセンスに刺激を受ける話というのは何でも面白いです。

aruku000.hatenablog.com

しかしこの「(自称)ブロガー」というのは便利な肩書きで、見ず知らずの相手にインタビューを申し込んでもわりかしOKを頂け、非常に面白い話が聞けてしまいます。

「ならドバイでも同じことやったれ」と思い、今回はドバイの有力VC、TURN8にお邪魔しました。

今回インタビューに応じてくださったのは、Portfolio ManagerのNour Halabiさん。アメリカ生まれ、ドバイ育ち、ハーバード卒のシリア人です。グローバルぅ。

(ご本人の写真撮り忘れたので、インタビューの場となった応接室だけ…)

そもそもアクセラレータという業種の定義については私自身もあいまいだったのですが、簡単に言えば「シリーズAよりも前、いわゆるシード段階の事業(あるいは事業アイデア)に、ごく少額の出資とインフラ・人脈などのサポートを提供し、数週間〜数ヶ月の間に本格的に投資家に声を掛けてもらえるレベルまで持っていく」ようなVCを指します。

なぜ、ドバイでVCなのか

バイにスタートアップのエコシステムなんて根付くのか?というのが最初の疑問だったのですが、まさにそれが、TURN8がアクセラレータという形で事業を展開している理由だそう。

「ドバイ自体を、スタートアップがぐんぐん育つ集積地にしていこうとは思っていません。シリコンバレーシンガポールと比べたら、ドバイはインフラ面もカルチャー面も何周も周回遅れですからね。しかし、この国は自前の産業基盤が乏しいかわりに、『世界中の最高級・最先端なモノのショーケース』というポジショニングで成功している。事業コストも低いし、シード段階のスタートアップが芽を出すまでの期間に限れば有数の環境だと思います」

この「ショーケース」という表現は、ドバイに住んだことのある人なら誰もが言い得て妙とうなずくはずです。良く言えば豪華絢爛、悪く言えばこけおどし。

バイと聞くとこーんな摩天楼だらけのイメージがあるかもしれませんが、

Dubai Marina

都市の最中心部でさえ、もうちょっと視野を広げるとこんな感じです。

都市最大のメインストリートの両脇には確かに高層ビルが並び立っているのですが、それだけ。上の写真はまだ海岸側を写しているので建物が見えますが、内陸側はガチの砂漠が延々と広がっています。

更に、ある意味「本当のドバイ」である旧市街地などは、UAEというよりももはやインドです。このあたりはまた別の記事で詳しく書こうと思いますが、今も昔も出稼ぎ労働者で成り立っている国なので、最大派閥はインド人、街の雰囲気もインドのそれで、物価水準も「キラキラエリア」からはだいぶ下がります。

つまり、

「確かに物価が高いエリアは高いけれども、そうでないエリアに土地はありあまっているし、安く暮らそうと思えばけっこう安く暮らせる。そして、何といっても税金がほぼタダ。そんなおいしい条件がそろっている場所って、世界中探してもそうそうありません」

ということなのです。 

アクセラレーションの、その先

ただし冒頭にもあった通り、スタートアップが芽を出した後、「育っていく」ステージにドバイは必ずしも適していません。

「少なくとも今現在は、アラブ人のお金持ちの間に、スタートアップに投資するという文化はないんです。中東の既存企業がスタートアップに関わりを持つ場面としては、単発の『発注』がせいぜい。そこから更にリスクを取って、『出資』まで踏み込むケースはほとんど目にしませんね」

だからTURN8は世界中に拠点を構えており、アクセラレーションに成功したスタートアップを、その中から最も適したエリアに送り込むことを一つのゴールとしています。

「たとえばシンガポールフィンテック、ヘルスケア、AR/VRといった分野が伸びているし、シリコンバレーではハードウェアやロボティクスといった分野で圧倒的にリードしています。こういった地域ごとの特性も念頭に置きながら、TURN8の各拠点で投資家とのネットワークを広げていて、アクセラレーション後のスタートアップを彼らに紹介できるようにしています」

そんなモデルを象徴するように、オフィスの中には専用の「ピッチ部屋」があります。ここでTURN8を「卒業」しようとするスタートアップが、世界各国の投資家に品定めしてもらうのです。

「我々はあくまでシードステージのお手伝いなので出資金額は$30K〜$80K程度ですが、ピッチ部屋だったり、無料のコワーキングスペースだったり、提供しているインフラは実ニーズに応えたものなのでガンガン活用されています。実は今年中にもキャパ拡大のためにオフィス移転予定なんです。文字通り『紙と鉛筆』(試作品も何もない、純粋なビジネスアイデア)の段階で来てもらって支援を決定したスタートアップもたくさんありますし、アクセラレーションに特化しているからこそ、シードステージ特有のニーズにしっかりフィットできていると自負しています。

そうそう、今回インタビューの話を聞いて乗り気になった理由のひとつは、TURN8はこれだけ世界展開しているのに、日本からのスタートアップだけはまだ一社も出てきたことがないんです!日本はレベルの高いプロダクトやサービスが溢れていて、VCとしても興味深く注視している国なので、一歩を踏み出してくれる起業家をお待ちしています!」

 

※もし実際にTURN8のアクセラレーションに興味を持たれ、紹介して欲しいという方がいらっしゃいましたら私のTwitter (@aruku000) へのDMでご連絡ください。

絶対に「来る」ストックホルムの怪物スタートアップ、truecallerに突撃インタビュー!(後編)

ずいぶん間が空いてしまいました……。前編の続きです。

aruku000.hatenablog.com

人員はほとんどエンジニアですか?

いえ、エンジニアは全体の6−7割ですね。残りはノンエンジニア(いわゆる文系)です。

そういえば、採用ページでもローカライゼーション・マネージャーという募集枠がありましたね。これは間違いなくノンエンジニアでしょう……日本市場向けのローカライザーも要りませんか!?(筆者は文系)

ローカライゼーション・マネージャーというのは、特定の市場ごとにローカライズを担当しているわけではないんです。各国のAppStoreで翻訳版がリリースされるにあたって、一定のデザイン性やブランドコンセプトが保たれるように気を配るのが仕事です。

AlanのSlushでのプレゼン(前編に掲載)にもあった通り、単純な数だけで言えば英語さえ対応しておけば十分なシェアは取れるのですが、特定の言語に非対応であることが、AppStore上で感情的な低評価・批判コメントを招いてしまうこともあります。

だからマーケットを広げるにあたって、各言語版についてそれぞれしっかりとクオリティを保つことは大切なんです。

なるほど。人材を集める観点から、ストックホルムという立地についてはどうでしょう?

そうですね、やっぱりここ数年でグッと才能が集まる都市になったという実感はありますし、そもそも住む場所としては世界でも最高の選択の一つだと思います。ただ……

ただ?

当たり前ですが、税率が高いというのは、ビジネスを急成長させようという中では本当に重い足かせですね。

スタートアップではストックオプションが優秀な人を連れてくるための一つの重要ツールですが、その譲渡にも重い税金が掛かってきますし。

スウェーデンの国家モデルが世界的にも評価されているのは知っていますが、この点は本当に、外から見ている以上にみんな苦戦していると思います。

あー……。シリコンバレーとの比較を意識することはありますか?

シリコンバレーはスタートアップのホームタウンとしてはるかに成熟しているので、ストックホルムはまだまだずっと手前のステージにいると思います。

シリコンバレーはもっと、事業しかり人材しかり、とにかく競争原理ががっつり働いてみんながしのぎを削り合っている。どちらが良いとはあえて言いませんが。

今のストックホルムだからこそ味わえる環境のバランスというのも、あるのかもしれませんね。

そうですね。そういえば日本も最近ユニコーンを輩出して、アメリカに進出するって話がありませんでしたか?えーと、名前は……

メルカリ?

そうそう、メルカリ。個人的にはアメリカ市場って大きいは大きいけど細分化されてて、「一網打尽」にボリュームを取り込める新興国市場と比べると、あまり魅力を感じないんですけどね。幸運を祈ります。

筆者注:この論点については面白い記事を見つけました。「あえて」の米国進出ということのようです。

www.fashionsnap.com

さて、そろそろ時間も迫ってきました。Kimさんのキャリアプランについて伺っても良いですか?

うーん、この会社で働くことを、「キャリアの通過点」という位置付けではあまり捉えていないですね。ストックホルムのスタートアップの人たちは、案外そういうタイプが多いんじゃないかと思いますけど。

少なくとも今は、とにかくtruecallerのポテンシャルに心の底からワクワクしている状態です。私たちの可愛い赤ちゃんみたいなものですから、まずはこのプロダクトで世界を変えてやりたい、というところに尽きます。

その先のことは、今のところは考えられないかな。

なるほど、よく分かりました。では最後に、日本の皆さんにメッセージを!

とにかく話した通り多様性を大切にしているチームなので、世界中どんなところからでも才能をお待ちしています。

truecallerは、間違いなく数年以内に世界を変えるプロダクトだと私たちは確信しています。大きな事を成し遂げたいという熱い思いのある方は、是非HPからエントリーをお願いします!

Kimさん、ありがとうございました!

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(お土産にいただいたTシャツ)

まとめ

  • ストックホルムは、意外と多国籍なチームが成り立つ場所だった
  • でも理想郷ではない。当たり前だけどやはり、高税率はスタートアップには重荷
  • 事業の出発点となる問題意識がファンダメンタルだと、射程圏内に入るパイはここまで大きくなる
  • 先進国の常識では全く想像のつかないような商売のツボが、新興国には多々ある
  • キャリアアップも良いけれど、腹の底からの情熱には敵わない

インタビューの依頼を出した時はあまりにも厚かましい申し出で正直ドキドキでしたが、思い切って伺って本当に良かったと思える貴重な時間でした。またいつかお邪魔したいと思います!

絶対に「来る」ストックホルムの怪物スタートアップ、truecallerに突撃インタビュー!(前編)

今回の休暇では北欧を旅してきました。中でもスウェーデンの首都ストックホルムは、シリコンバレーに次ぐ世界第2位のスタートアップ都市と言われており、きわめて興味深い場所だ…というのは前回の記事でご紹介した通り。

で、あれば。どんな観光スポットを差し置いても、スタートアップを見物せず帰る訳にはいくまい。

という野次馬根性で、「Stockholm startup」でググって出てきた適当な会社にメールを送り付けたのが一週間前でした。

日本語だしどうせ分からないであろうと、この泡沫ブログを根拠に「Japanese blogger」を名乗っての取材依頼。自分なら絶対断るなぁ……と正直あまり期待していなかったのですが、意外にも5社中2社から快諾を頂き、じっくりとお話を伺うことができました。

truecallerを知っていますか

1社目は、スマート電話帳アプリを提供するtruecaller

イエローページをクラウドデータベース化したようなアプリで、自分の端末の電話帳に登録していない相手でも、truecallerのデータベースに載ってさえいれば、名前から検索して電話番号を知ることができます。

また逆に着信時にも、端末への登録有無にかかわらず発信者情報を表示してくれます(スパム報告の多い番号であればブロックできる)。


The New Truecaller – A smarter way to make calls

正直、下調べの時点では「ふーん」としか思わなかったのですが……。このプロダクトのポテンシャル、相当ヤバいです。そのあたりはまた後ほど解説します。

いざオフィスへ

シリコンバレーと違って都市自体は古くからの歴史があるので、建物の外観は「いかにもスタートアップ!」という感じではありません。

少々わかりづらいですが水色の旗にtruecallerと書いてあります。

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オフィスに入ると、卓球台、そしてオシャレなリラックススペース。ああ、スタートアップですね。

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さて、今回出迎えてくれたのは渉外責任者のKim Fai Kokさん。ルーツはマレーシアの華僑ですが、生まれも国籍もスウェーデンです。80人前後の同社で4番目の古参とのこと。以下、彼との一問一答です。

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どんな経緯でtruecallerに参画したんですか?

スウェーデンの大学で国際ビジネスを専攻していたんですが、途中でオリンピック当時の北京やW杯当時の南アフリカに留学して、世界中からクールな人たちが集まるのに触れ合うことができたんです。それがすごく刺激的で、キャリア観に大きく影響を受けた。

中でも当時、新たなビジネス領域として黎明期だったスマホアプリの産業に興味を引かれました。

実はCEOのAlanは大学時代のメンターとして知っている相手だったので、卒業と同時に彼に掛け合いました。会社は立ち上がったばかりで私に給料を払えるようなお金は無くて、無給とせざるを得ない状況だったのがネックでしたが……

無給でですか!?すごい決断ですね。

周りからは当然、何をバカなことを言ってるんだと大反対されました(笑)。

でも、こんなチャンスは無いと。こんなに面白くて、世界を変えうるようなビジネスに、どうしても自分も参加したいと思いました。

技術系のスキルがある訳でもなかったので、最初は本当に雑用係。みんなの朝食を用意したり、オフィスを掃除したり……。でも結局、無給期間は数ヶ月に留まり、ちゃんと給料を貰えるようになって今に至っています(笑)。創業メンバーとして持ち株もありますしね。

なるほど。当時の会社の陣容は?

まずCEOと、共同創業者。それに現CTOがいて、3人ともバックグラウンドは技術系。その次に入ったのが私ですね。

ちなみにCEOは私と同じで国籍はスウェーデン人ですが、ルーツはクルド系。同じく共同創業者はイラン系、CTOはトルコ系です。この多様性に富んだ文化も当社の魅力・強みの一つだと思っていまして、現メンバーは約80人ですが、40以上の国籍で構成されたチームになっています。

truecallerの、プロダクト面の強みは何でしょう?そもそも私、このサービスの軸が何なのか今ひとつ分かっておらず……スパムブロッカーとして優れている、とか?

いえ、もっと根本的な問題を解決しているのがtruecallerなんです。

そもそもの発想は、電話番号というものが発明されてから相当な時代を経ているにもかかわらず、なぜこんなにも進歩していないのか、という問題意識から出発しています。

例えばメールアドレスであれば発信者のドメインが分かり、IPアドレスが分かり、さらに署名を付けていれば大方の基本情報が分かる。それに対して電話というのは未だに、知らない番号から掛かってきたら何も分からない。番号そのもの以外、ひも付いた情報が何も無いですからね。

だからこそ、AppStoreも無いような時代(携帯にアプリを入れるということが、パソコンやら専用ケーブルやらを動員したややこしい特殊な作業だった時代)にリリースして、初週で1万ダウンロードという結果に繋がった。

そんな時代があったことすら知りませんでした。状況を考えると相当な数字ですね。

そうなんです。今はさらに、インドや中国といった新興マーケットへの進出に力を入れていますが、向こうでは尚さらヒットしています。

なぜなら、新興国スマホに触れ始めた層の人たちにとって、Eメールはまったく身近なものではないんです。先進国にいると、メールアドレスというものをもはや当たり前のような存在のように考えてしまいますが。

だから、先進国でよくメールアドレスを記入してアカウントを作るのと同じような感覚で、電話番号が唯一の個人認証の手段となっています。その電話番号にひも付いた情報のデータベースを提供しているので、当然重宝される。

素晴らしい!Slush(フィンランドのスタートアップイベント)でも、新興国戦略のポイントをCROのAlanさんが話されていましたね。


Building Apps For Fast Growth Markets by CEO of Truecaller

ええ。プレゼンでも説明されていたように、新興国で売られている格安仕様のスマホは、データ容量が先進国のものよりはるかに小さい。

だから先進国マーケット以上に、画面下の「常駐アイコン4つ」のスペースに入れてもらえるかどうかに全てが懸かってきます。それ以外の「あったらいいけど、なくてもいい」みたいなアプリを、入れてもらえる容量なんて無いんです。

そういう「必需品」のアプリとして、truecallerは認識してもらえている。新興国での拡大が順調に進んでいるのも、そのおかげですね。

私はてっきり、インド市場に精通した凄腕マーケターがいたのかと……

実は、そういう属人的な要素は本当に無いんです。アプリをリリースして、それがマーケットに受けて、あくまで自然発生的にヒットした。これに尽きます。

普通、スマホアプリに手を出す時点で、対象ユーザーは「スマホユーザー、かつ、〇〇」となってしまいますよね。Airbnbであれば、スマホユーザー、かつ、旅行者。Kindleであれば、スマホユーザー、かつ、読書好き。

それがtruecallerの場合、スマホユーザーほぼ全てがそのまま対象となるんです。何せ電話という、スマホの一番根本的な機能を押さえているわけですから。これもヒット要因ですね。

以降、後編へ続く!

アラブ人のマネージャーとして1年過ごした所感。彼らの強みと弱み

仕事で今のチームにマネージャーとして加わって、約1年が経った。

チームにはインド人やフィリピン人もいるけれど、今回は特にアラブ人との関わりから感じた学びについて。

得意分野と苦手分野

押しが強く人との間合いが近いので、そういうことが必要な仕事では心強い。営業向きだと思う。

ただ、緻密な作業は苦手。一度コミットしたら食らいついて粘り強くやり遂げる、という責任感も強くない。放任では尻すぼみになりがちなので、ちょくちょく盛り立てて勢いを維持することが大事。

社内外ともに、「言ったのに何でやってないの?」ということはあまりにも数多すぎるので、いちいちキレていたら身がもたない。これはもう、自然と人のコミットメントには期待しすぎないようになる。

反応のわかりやすさ

日本人のような、上司にはとりあえず従順に従っておけ、というマインドは薄い。
だから、不服そう、納得していなさそうなことは良く分かる。そういうフィードバックを元に伝え方を修正していくことがしやすく、マネージャーとしての力量の良い訓練になっていると思う。
その意味では、日本人の部下こそ、マネージャーとしての力量を鍛える上では厄介なのかもしれない。

向上心vsプライド

一番難しさを感じたところ。色々なポイントでやんわりと「改善」を提案するものの、すごく敏感に「それは既にやってる」「だけど◯◯(他の誰か)が××だから良くならないんだ」と、自分のプライドを守る方向に行ってしまう。

多少思うところがあっても、まずは改善できる部分があることを謙虚に受け止めて……などと殊勝な発想は、まず期待できない。

なのでこの手の話をする前には、個人を責めるつもりが全くなく、チームのパフォーマンスを上げるために何ができるか一緒に考えて欲しい、というスタンスを何よりもまず強調する。

それでも、放っておくとすぐ「他の誰か」の改善という話にズレてしまう。しかしそこは、「分かった、確かにそれはそうだと思う。でも、うちのチームにも何かしら改善できる部分があるんじゃないだろうか」と、しつこく問いかけるようにしている。

意外と歳は気にする

日本人のように自分と比べて年上・年下という見方ではないが、肩書きだけでなく、年齢もけっこう気にしている。

肩書きが付いていても若造は若造として見られるし、逆もしかり。だから、大事な交渉には肩書きもさることながら、年齢も鑑みながら布陣を考えたりする。

一肌脱いでくれる

兄貴肌みたいなところがあり、「助けてくれ」「教えてくれ」的なスタンスでお願いしたことには、すごく頑張って応えてくれる。

アラブ人自身が厳しい交渉をする時の最後の切り札も、自分という個人がいかに困っており、相手の助けを必要としているかを訴えかけることだ。相手に対しても「最後は一肌脱いでくれるはず」という感覚があるのだと思う。